【蔵珍窯】
主宰する小泉蔵珍(こいずみ ぞうほう)氏は、約320年続く神官の12代目。陶芸を志し、名門幸兵衛窯にて修行ののち、昭和45年に独立開窯。赤絵・染付・金襴手・織部・黄瀬戸・乾山・青釉など多技多彩にわたる作風は、伝統を踏まえ、現代に即した料理を盛って楽しめる和食器として多くの方に支持を得ています。蔵珍窯は、岐阜県神社庁の御用窯。厳選された顔料と、すべて手描きによる加飾で、水と光と土に感謝という神聖な気持ちを込めて熟練された20余名の職人たちによって製作されています。
【こだわりの朱色と藍色】
蔵珍窯の赤は、昔ながらの暖かみと奥行のある、人工ではなかなか出せない朱色。また、中国の明の染付に近づけるために鉄などを混ぜて渋くさせた味わい深い呉須(ごす)の藍色が、落ち着きのある上品な雰囲気です。
まさに、百花繚乱。古来より全国各地の窯が、それぞれ独自の技巧を駆使し、その味わいを競ってきた食器(うつわ)の数々。この世界は、十六世紀の頃から「鑑賞用」、「実用」の大きな二つの流れに集約され、それぞれに歴史を刻んできました。
「鑑賞用」の皿や鉢は、本来の使用目的にとらわれることなく、また最高の材料に、陶工の持てる技量、情熱のすべてを注いでつくられます。稀少で美術品としての価値もあり、しかも高価。その多くは作品として収納され、料理をのせて使われることは皆無です。
一方、もうひとつの流れである「実用陶器」は、手近にある材料を使い、手間をかけずにつくられます。安価ですが、芸術性や感性に訴える魅力はなく、味も素っ気もないものがほとんどです。
さて「蔵珍窯」は、それぞれの流れから水を引き、第三の奔流をつくるべく、溝を掘り、堤を築いてきました。使いやすく、料理を盛って調和する食器。目で見て、手に取って、さらに口に運んで、しみじみと良さがわかる食器。「用の美」(機能をみたす所におのずから美しさが現れる)を満たし、心を豊かに満たす食器を、これからも創造し、お届けしていく所存です。
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